日本経済新聞
岩手県大船渡市の元保育士、志田由紀さん(49)は仮設住宅で毎日、ダウン症で全盲の重度障害を持つ長女、名津紀さん(27)に約1時間かけ朝食を食べさせる。介助を手伝ってくれた母は、名津紀さんら家族を守るため津波の犠牲になった。震災の日、高台に向け自宅から車に乗ろうとする両親と妹、名津紀さんのすぐ後ろに津波が迫った。間に合わないと判断した母、勝部満代さん(当時74)は叫んだ。「おらはいいから、後ろ向かねえで早く車走らせろ! 頑張って生きろ!」。声に押され急発進した後ろから「バンザイ!」と家族の脱出を喜ぶかのような叫び声。直後に黒い水が一帯をのみ込んだ。
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